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「…記憶は戻らないけど……今ね?君の言葉に、僕の体の隅々から『嬉しい』って感情が
込み上げてくるんだ……ありがとうって…だからそんな、罰だなんて言わないでよ…。」
先程感じた不思議な感覚、その正体が今はっきりと分かる。
【喜び】だ
記憶を無くしている今でも、ジャンが気になって仕方がなかった…
彼の言葉、行動、表情に自分の心が動かされるのが分かる。
…笑って欲しい…
その想いのままに、フィリスは優しい表情でジャンを見つめた。
そんなフィリスの言葉に少し顔を上げると、ジャンも僅かに笑みを零した。
「…どうしたら、元に戻してあげれるだろう…。」
「僕も早く戻りたい…君がこんなに近くにいるのに…もどかしいよ…。」
「僕に出来る事なら何でもしてあげたい…」
「あっ!き、きみっ…!ちょっ!わぁっ!!」
「っ!!」
切ない表情を浮かべるフィリスを抱き締めようと腕を伸ばしたその時、
ジャンの思いがけない行動に驚き後ろへ下がったフィリスは足元の石で
バランスを崩し、ジャンと共に後ろへ倒れた。
「フィ、フィリス、大丈夫!?」
二人分の衝撃を受けたであろうフィリスに、跨ったままの状態で軽く揺さぶり意識の確認をする。
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