5557人が本棚に入れています
本棚に追加
/1039ページ
少し手前に、たくさんの人だかりができていた。
そこの道は十字路になっている。
京内でも大きい道として知られるこの道は、今や右から左へと、たくさんの人が列をなしており、もはや交通の弁は完全に止まっている。
湊はその列の一番後ろにくると、背伸びしたり跳び上がったりして十字路の真ん中を見ようとする。
……が、周りは背の高い大人ばかりなので、彼女が見えることは無く、さらに人が増えてくるばかりだった。
「あー!!もう、何やね!」
ついに湊が痺れを切らした。
「全然見えへんて!おっさんら、どきぃや!!」
『おっさん』という言葉に、周りの数人(男性)はギロリと湊を一瞥したが、彼女の苦労が減った訳ではない。
「ねぇみなちゃん。何しとんの?」
尚も頑張り続ける湊に、後ろで見ていた蕨は聞いた。
「それは、アンタも手伝わな、教えんさかい!」
「手伝うったって、何すればええのん?」
理由がなければ、頑張る意味もないと、蕨は心の中で密かに思った。
「この列の一番前を、ぶんどるんや!」
「ぶんどるって……」
もっと綺麗な言葉を使えないものだろうか。
それに、答えになってない。
まぁ、食い付くだけ無駄か。と蕨は短いため息をついて列の一番前に行く方法を探し始めた。
.
最初のコメントを投稿しよう!