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オーダーが入った。 結婚指輪だ。 私の働いている店はシルバーのオリジナルアクセサリーやオーダーアクセサリーを扱っている。 ペアリングのオーダーはよく入るけど、結婚指輪は珍しい。 しかもそのお客さんはデザイナーに私を指名してくれたらしい。 恋愛モードに浸っていた昨夜とはうって変わり、私のメラメラ魂に火がついた。 その日は閉店になるまでスタバに居座ってその指輪のデザイン案を練っていた。 「すっかり遅くなっちゃったよー。」 夏も近付き、日が長くなったせいか、最近時間の感覚が麻痺する。 「ただいま。」 戸を開けると、エプロンをしたヨシがキッチンに立っていた。 「おかえり!あと少しだから、手洗って待ってて。」 「ご飯作ってくれてるの?すごい!」 「あっ、でもあれよ、交代だかんね、忙しい時はお互い様よ、ね。」 「うん。ありがとう。」 なんで仕事してたって分かったんだろう?まぁ、いっか。ヨシは私のこと何でもお見通しなんだな。
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