彼女は生きる手段を知らない

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それは美咲も例外ではなかった。何となく会話した美咲とヒヨコは、何となく意気投合し、何となくヒヨコが駅前で寝泊りをしていることを知った。 中学生だと思っていたヒヨコが十九歳だと知ったときには、驚いた。 美咲はうちにウツの彼氏がいるのよ、と言い、わたしが力になるんだったら、じゃあ。と、ヒヨコは言った。らしい。 何が力になるんだ、一体。 「ひよー。スプーンは、二番目の引き出しね」 「はーい」 まるで、昔から一緒に暮らしていたかのようなふたりのやりとりは、何となく微笑ましい。美咲は家を出るときとはうってかわって、楽しそうな子供のような顔をしている。 「ねえ、この家に、パソコンはありますか?」 深夜一時にようやく出来上がったカレーを食べながら、不意にヒヨコが言った。ぼくの頭痛は治まらないので、頭の上に氷袋を載せたまま食卓についている。 「ごめんね、パソコンはないんだ。貧乏でさ」 笑いながら、美咲が言った。『そういうつもり』ではないのだろうけれど、ぼくの心臓にその言葉はぐさり、と刺さる。 「わたし、持ってきたんです、良かったら、インターネットが繋ぎたいんです」 「え、持ってるの。駅で寝てるなんていうから、そんなもの持ってないと思ってた。てゆうか、売ればいいのに」 「なんとなく、持っておきたかったんですよー。それに、インターネットがしたいんです」 「インターネットかあ」美咲は暫く考え、「じゃあ、明日繋ぎに行こう」と、スプーンを口に入れたまま言った。 「明日?」ぼくの頭から氷袋が滑り落ちる。「大丈夫なの?」 「だってひよが繋ぎたいんだから、繋ごうよ」 美咲はとても楽しそうだった。
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