typhoon

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 荒井は野球部に入っている。二年生ながら四番を打っているのは凄いと思う。きっと実力があるのだろう。 「いい天気だな」  荒井が雲ひとつない青空を見上げている。 「でも、台風が近付いてるよ」 「え?」  荒井の瞳が俺を捕える。澄んだ綺麗な目だ。 「なんで矢内はそんなことがわかるんだ?」 「俺喘息あるから、気圧の変化に敏感なんだ。なんだろう、喉がいがいがする」 「ああ、だからさっき咳をしてたんだ……」 「うん……」  荒井が納得したという顔になった。  荒井が視線をグラウンドに移す。倣うように俺の視線もそこに向く。ただ、片隅に荒井の姿を入れてだけど。  無いものねだりなのか、俺はずっと荒井に憧れていた。運動神経がよくて、活発で、顔もまあよくて、背も高くて。羨ましいな、と見ていた感情は次第に違うものになっていって、今では好きなんだという自覚さえある。だからグランドが見渡せるこの場所でしばしばスケッチをしているんだけど。  涼しい風がすうっと吹いて、俺達を静寂が包む。無言で荒井の隣にいるのはとても落ち着かなくて。俺の早い鼓動が聞こえてしまいそうだ。
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