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俺は荒井を意識している。荒井も俺を意識している。お互いはっきりとは口にしていないけど、好きあっているはずだ。だから今日はいわゆるデートってやつで。
「荒井、クラブはないのか?」
「クラブ?」
野球部の荒井は、土日関係なく部活がある。だから日曜の今日、ゆっくりしていていいのかちょっと不安になって。
「ああ、冬場は練習休み。野球っていえば夏だろ?」
「そうなのか?」
「そう。冬はラガーマンのシーズンだから」
「まじで?」
「マジマジ」
荒井が声を立てて笑う。
俺達はゆっくり話をしたことがなくて、だからお互いのことをよく知らない。
「なあ、矢内観覧車乗らないか?」
荒井が目の前にそびえる観覧車を指差した。
「うん、乗りたい」
「じゃ、行こう!俺観覧車大好き」
「荒井も?俺もだよ」
新しい発見があるのはとても楽しい。好きな相手のことを一つずつ知るのは、とっても幸せなことだ。
チケットを買って、乗車待ちの長い列に並ぶ。前も後ろもカップルで、居心地の悪さを感じた。だって、カップル達はイチャイチャベタベタしていて、目のやりばに困ったから。
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