First kiss

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 30分待ってやっと順番が回ってきて、俺達はいそいそと箱に乗り込んだ。観覧車は俺達を乗せて、ゆっくりと空に上がって行く。高さが増すのに比例して、街の灯が小さく見える。 「きれいだな……」  ため息みたいな荒井の声。 「うん。凄いきれいだ」  その灯はまるで宝石のように煌めいている。 「富士山が見える」 「え、どこ?」 「矢内の後ろ。そこじゃ見にくいからこっちにこいよ」  荒井が自分の隣の席をポンと叩いた。 「……うん」  俺の胸がトクンとなった。 「ちょっと怖い……」 「平気だって」  荒井に手を貸して貰い、俺は揺れる籠の中を荒井の隣に移動した。繋いだ手は、そのままだ。もしかしたら俺の早い鼓動は、伝わっているのかも知れない。 「どこ、富士山」 「そんなの見えないぜ」 「は?」  俺の問いにかえってきたのは、予想外の答えだった。  「日が暮れてるのに、見えるわけないだろ?」 「騙したのかよ」 「騙される方が悪い」 「なんかムカつく」  ソッポを向いた俺の頬に、荒井の掌がそっと触れてくる。 「矢内……」
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