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キスの余韻の甘い雰囲気は、ずっと俺達の側に漂っている。キスしただけなのに、俺達の仲は急速に接近したみたいだ。
荒井の手がモゾモゾと動く。
と、観覧車で繋いだ固い感触が思い出されて、羞恥が襲ってきた。
「矢内……」
荒井が口を開いたのと同時に、電車が滑りこんできた。
「なに、荒井?」
「いや……。俺帰るわ。また明日」
「うん」
荒井を乗せた電車のドアがプシュっと閉まった。そしてゆっくり動きだす。俺は扉越しに荒井に手を振った。その時荒井の唇が動いた。
「好き」
確かにその唇はそう動いた。
電車はすぐに速度を上げ、ホームから走り去った。
俺は幸せな気持ちで一杯になった。
「俺もだよ」
俺は軽い足取りで帰路についた。明日会ったら、自分の気持も打ちあけようと心に決めて。
おわり
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