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宮廷の正門前まで来ると、今まで一度も止まることなく駆けて来た馬が、足並みを揃えて止まった。
「少し待っていて下さい」
そう言うとスニオンは馬から下り、ユーリスに手綱を渡す。
ユーリスは、冷え切って言うことを聞かない手をなんとか動かし、手綱を受け取った。
そして、目の前に広がる宮廷の敷地をまじまじと見た。
灰色の大きな門が前に立ち塞がり、敷地内は柵に囲まれている。
門には竜が刻み込まれ、凛々しく気高いその姿に息吹きすら感じ取れる。
スニオンは、門の前に立っている門番兵の所へ話しをしに向かった。
ユーリス達の位置からは何を話しているのか聞こえないが、すぐにスニオンは戻ってきた。
再び馬へと跨りながら、後ろの二人へと話しかける。
「裏門から入る」
ルシファートとセブルスが静かに頷いた。
「駆けさせます」
とスニオンが言い、
「はい」
とだけ返事をした。
再び走り出しても、ユーリスの目は正門に釘付けだった。
なぜなら、門に刻まれている竜の姿に、一瞬にして心を奪われてしまっていたから……。
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