使者

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「なっ!?」 男は絶句した表情を浮かべたまま、固まってしまった。 当然といえば当然かもしれない。 フレイズの薬師を名乗る者が、ユーリスのような十五歳の子供とは誰も思わない。 「期待を裏切ってしまって申し訳ありません。 父、先代は四年前に亡くなりました。 亡くなったのが受け継ぎ後だったので、今ではボクがフレイズの名を継いでいます」 ユーリスの言葉にはっとした男は、慌てて口を開いた。 「そうでしたか、驚きました。 しかし、名を継いでいるのでしたら貴方がフレイズの薬師ですね。 私達と共に、ケルティカ、王のもとへお願い致します」 男の言葉は優しかった。 しかし、『いいえ』とは言わせないという強い意志が色濃く現れている。 「その慌てようからして、急病人ですか? しかし、王都ケルティカへは……」 今は亡き父から聞かされていた。 十二年前までフレイズの薬師と言えば、ミレルド国、王都ケルティカでは名高い薬師であった。 宮廷に出入りすることを許され、その腕は天下一品。 薬と毒の扱いに長け、治せない病は無いとまで言われていた程に。 しかし、その状況はある事件によって一変する。 それにより、フレイズは王都を追われ、ミレルド国外れの森に姿を隠した。 そして今、王都を追われた身分の自分を訪ねて来たうえに、これだけ急かすというのはどういうことなのだろうか。 「その事につきましては、カルスルキンズ王の許可がおりています。 王の第四子、イエラ様が原因不明の病にかかり、国中の薬師や祈祷師-キトウシ-をもっても未だに快復しておりません。 そのため、王直々にフレイズの薬師を呼ぶようにと」 .
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