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「森へ帰ったのかな。
オトナリさん、行ってきます。 ボクが留守の間家をお願いしますね」
姿を消しただけで、まだ部屋に居るかもしれないと思い、ユーリスは声をかけた。
返事は無かったが、きっと不機嫌そうな顔で聞いていてくれたに違いない。
「父さん、いってくるね」
誰も居ない部屋にそう呟くと、ランプの火を吹き消した。
外へ出て行くと、男達は馬に跨り、ユーリスが来るのを待ち構えていた。
先ほど話をした男が馬を持っているかと聞き、持っていないとユーリスが答えるや、男は自分の馬へとユーリスを上げてくれた。
満天の星空。
空気が静寂を伝えている。
家を振り返ると、夜の騒ぎを聞きつけて来たのか、精霊達が不安そうな顔をのぞかせていた。
その中にオトナリの姿を捜すが、見当たらない。
「駆けさせます、しっかりと捕まってください」
男の声に我にかえったユーリスは、男達に気付かれないように、精霊に小さく手を振る。
ユーリスは不安な気持ちを胸に、王都ケルティカへと出発したのだった。
ユーリス達の乗った馬が先頭を走り、二頭が後から走る。
月明かりを頼りに、暗い森の道なき道を、三頭の馬はただひたすら駆けた。
走り出してすぐに、一緒に馬に乗った男が詳しい事情を話してくれた。
彼の名はでスニオン、一つ後ろの馬に乗っているのはルシファート。 一番後ろを走る馬に乗っているのがセブルス。
彼らはミレルド国、王カルスルキンズの命を受け自分を連れてくるように遣わされた。
なんでも、第二夫人との間の子、イエラ姫が原因不明の病に倒れ、二週間もの間床に臥したままだという。
宮廷中の薬師や祈祷師を集めても病は治らず、原因も突き止められない。
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