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「私は、恐れ多くも貴方様を愛してしまっています」
動けぬ男の目前で、女は続ける。
「ですから、貴方様が愛したその女性も、きっと愛せましょう」
雨雲から解き放たれた朧な月光が、二人を照らす。
街灯などは要らぬ、わざとらしさを含むまばゆさで以て。
「ですから……私は……貴方様の御側に居ます。
ずっと…………そう、ずっと……」
二人の頬に伝うのが雨の雫か涙の珠か。
それは二人にも判らぬまま、月は再び雲に隠れた。
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