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別人であって欲しい…
その思いは無駄だった。
『婚約者のナナコで~す!』
ナナオは幸せそうな顔でアタシを男に紹介した…
『はじめまして…ナナコです…』
『はじめまして!ナナオ~かわいい子見つけたじゃね~か!』
男はビックリした顔を一瞬見せたが笑顔で挨拶してきた。
『緊張してるの?』
ナナオが心配そうにアタシを見る…
『偉い人だって聞いてたから少しだけね、でも大丈夫だよ』
アタシはまたいつもの様に笑った。
ナナオが席を外すと男は言った
『ナナオは君と僕の天使ちゃんが似てるって言ってたけど…』
また心臓が苦しくなる。
テーブルの下でアタシは自分の手を強く握った。
『全然似てないよ!僕の天使ちゃんは君くらい美人だけど、いつも孤独であまり笑わないクールな子だったからね!それにすぐ嘘を付くんだ』
と大笑いした。
『ありがとう…』
アタシの目から涙が溢れ出す。
男の前で泣いたのは初めてだった。
ありがとう
ありがとう
ありがとう
ごめんなさいみんな…
ごめんなさいアタシ…
『ナナを宜しくね』
とアタシ達に言うと男は帰って行った。
『どっちのナナ?まさかあの子!?』
ナナオは楽しそうにツッコミを入れている。
『ナナコ目が赤いよ!寝不足?』
それには答えずアタシはナナオを抱き締めた…
『ナナオ…愛してる』
嘘つきナナコ
ナナコとナナオはしばらくして結婚した。
4人の子供と2匹の犬に庭の広い大きな家―
相変わらず綺麗なナナコはもう嘘を付いていない。
HAPPYend
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