嘘子

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『はじめまして』 (ナナコ会った事あるんでしょ?) ナナが小声でつついてきた。 (相当酔ってたから覚えてないと思って) アタシがナナに耳打ちしてると 『ナナコちゃんだっけ?前に会った事ある気がするなぁ~ちなみに俺ナナオ』 山下は噂とは違い気さくに話しかけてきた。 ナナが脇から『アタシはナナなんですぅ~』とか叫んでるけどスルーされてた。 山下の勘違いでアタシの嘘は今回もバレなかった。 みんな酔っ払って下品なゲームをしてる中、アタシと山下は初デートの中学生の様な話題で2人で盛り上がってた。 『俺、親父が50過ぎてからの子だから今じゃ親父も爺さんでさ~子供の頃はそれが凄い嫌だったんだよね~』 『うちも一緒。お姉ちゃんとアタシ一回り違うし』 山下と話してると楽だった。嘘を付かなくてすむ… ナナが不細工な芸人に持ち帰られてるのを横目に 『送るよ』山下が言った。 『ありがとう。でも大丈夫、今日はとても楽しかったです』 アタシがタクシーを停めようとした時 『芸人とか業界の人と良く遊んでるの?』 『初めてですよ』優しく笑うアタシ… 『今度2人で会えないかな?』 アタシはさらに微笑んだ。 山下はレギュラー番組を何本も持つ売れっ子芸人。 以前は女の噂もたくさんあった…昔はかなり遊んでたけど最近はたまに合コンに顔を出してもすぐに帰る、最後までいたのは久しぶりだって言ってた。 心が踊る― アタシは小学生以来振りに恋に落ちた。 アタシ達は何度か会ってそれから付き合った。 ちゃんとしたかったからって付き合うまでキスすらして来なかった。 アタシはいつの間にか嘘を付かなくなっていた…
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