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鈴香が教室に戻った時、異様な空気になっていた。
よそよそしい空気。
長い間いづらい空気。
鈴香には、目の前に広がっている自由な世界が変わったことを感じた。そして、自分に居場所がないことを直感した。
鈴香は黙って椅子に座り、携帯をゆっくりと開いた。
そして、掲示板を見る。
新しく投稿されていた。
それを見て、鈴香は顔をしかめた。
「どうゆうつもりや、レイ」
呟き、自分の隣にある広い息苦しい世界を見た。
「居場所がなくなってもうたし、もう、ええか。一か八かや」
レイ>>
私のメールアドレスだ。
いちいちアクセスするのも面倒だろ?気軽にくれればいい。
私を信用しないならそれでいい。だが、ここに残すことに危険があることを承知して欲しい。
掲示板には、ただそれだけが書いてあるだけだった。
鈴香は迷ったが、前にも後ろの世界にも、居場所がないことを確認し、簡単なメールを打つ。
そして、お気に入りのパンを投げやりにかじる。
窓の外を見、ノートを取りだし、黙って何かを書き始めた。
麗鈴は来たメールを見てくすりと笑った。
片手には、まだ本を持っていた。
そして、その隣からは、ウソつきの子供たちの笑う声がそこら中から聞こえていた。スズカ>>
今日は。誰か知らないけど早くメアド変えたら?変なメール、来るよ。掲示板の方はレスしといたから。
それだけの言葉。
しかし、麗鈴は自分を信用してくれたことに、とりあえず安堵した。
そして、メールアドレスを変え、スズカにメールを返す。
慣れない指。
慣れないボタン。
それらに、麗鈴は妙に新鮮な気持ちを抱いた。
携帯は何年も持っている。
しかし、友達のようなものに、メールを送るのは初めてだった。
「―友達、か」
呟き、またそっとため息をつく。
麗鈴にも友達はいた。
しかし、それは政治の世界を見ていくにつれて、減っていった。
そして、今に至る。
麗鈴に対してひどい嫌悪を抱く世界。
麗鈴をひたすら異端児扱いする世界。
麗鈴はそんな世界が嫌いだった。
そして、この世界に友達はいない。
また、味方も、いない。
鈴香は後ろにいる彼女に、メールを送った。
<<着信拒否>>
そんな言葉が表示された。
鈴香にあるのは、孤独と絶望感だけだった。
試しに周りを見てみると、みんなが一斉に視線をそらした。
鈴香はショックだったが、なんとか顔には出さなかった。
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