◆沈黙の戦争◆

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鈴香が教室に戻った時、異様な空気になっていた。 よそよそしい空気。 長い間いづらい空気。 鈴香には、目の前に広がっている自由な世界が変わったことを感じた。そして、自分に居場所がないことを直感した。 鈴香は黙って椅子に座り、携帯をゆっくりと開いた。 そして、掲示板を見る。 新しく投稿されていた。 それを見て、鈴香は顔をしかめた。 「どうゆうつもりや、レイ」 呟き、自分の隣にある広い息苦しい世界を見た。 「居場所がなくなってもうたし、もう、ええか。一か八かや」 レイ>> 私のメールアドレスだ。 いちいちアクセスするのも面倒だろ?気軽にくれればいい。 私を信用しないならそれでいい。だが、ここに残すことに危険があることを承知して欲しい。 掲示板には、ただそれだけが書いてあるだけだった。 鈴香は迷ったが、前にも後ろの世界にも、居場所がないことを確認し、簡単なメールを打つ。 そして、お気に入りのパンを投げやりにかじる。 窓の外を見、ノートを取りだし、黙って何かを書き始めた。 麗鈴は来たメールを見てくすりと笑った。 片手には、まだ本を持っていた。 そして、その隣からは、ウソつきの子供たちの笑う声がそこら中から聞こえていた。スズカ>> 今日は。誰か知らないけど早くメアド変えたら?変なメール、来るよ。掲示板の方はレスしといたから。 それだけの言葉。 しかし、麗鈴は自分を信用してくれたことに、とりあえず安堵した。 そして、メールアドレスを変え、スズカにメールを返す。 慣れない指。 慣れないボタン。 それらに、麗鈴は妙に新鮮な気持ちを抱いた。 携帯は何年も持っている。 しかし、友達のようなものに、メールを送るのは初めてだった。 「―友達、か」 呟き、またそっとため息をつく。 麗鈴にも友達はいた。 しかし、それは政治の世界を見ていくにつれて、減っていった。 そして、今に至る。 麗鈴に対してひどい嫌悪を抱く世界。 麗鈴をひたすら異端児扱いする世界。 麗鈴はそんな世界が嫌いだった。 そして、この世界に友達はいない。 また、味方も、いない。 鈴香は後ろにいる彼女に、メールを送った。 <<着信拒否>> そんな言葉が表示された。 鈴香にあるのは、孤独と絶望感だけだった。 試しに周りを見てみると、みんなが一斉に視線をそらした。 鈴香はショックだったが、なんとか顔には出さなかった。
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