◆辞書と現実◆

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麗鈴は掲示板を覗き、苦笑した。 「辞書の言葉か……」 呟き、笑う。 「山本さん、笑うんだ」 皮肉めいた言葉。 それを麗鈴は無視した。 その反応を、彼女たちは鼻で笑った。 「あんた、何様?」 文句がくるが、麗鈴はあえてそれをまた無視した。 「―ガキだな」 「なっ―!」 ボソリと呟き、相手を怒らせた。 これは麗鈴にとって、日常茶飯のことだった。 無視し、相手を怒らせる。 それによって、自分の株をひたすら下げていく。 こうした子供が、ウソツキたちになって世の中に出るわけか、と麗鈴は妙に納得した。 そして、掲示板に書き込みを入れる。 >>スズ (* ̄ー ̄)b〃 大人から見て少年・少女、幼児のことだよ。 >>レイ それは、辞書の言葉だね? 僕が求めているのとは、違う言葉だ。 じゃあ、僕も言おう。 大人とは、成長し、正しい分別を持った一人前の人たちのことだ。 これがなにか、君には分かるね? 鈴香はそれを見て、 「う〰」 唸った。 鈴香はこれが何を利用したのか知っていた。 自分より上手らしく、そして何よりも自分より頭が良い。 それに、当たり前だと思った。 しかし、嫌味な奴だと思った。 これは鈴香なりに考え、分からなかった挙げ句の果てに行き着いたものだった。 「スズ。早く行かんと、購買閉まってまうよ?」 時刻は一時近く。 鈴香は時計を見て凍りついた。 「スズ?」 「うちのレアパン!」 そう言って駆け出す彼女を確認し、彼女はそっとため息をついた。 「もうないって」 そしてゆっくりとその後を追う。 しかし、その足は途中で強制的に止まった。 前の通路を女子の集団が封鎖していたからだ。 彼女は踵をかえし、別ルートで鈴香の後を追うことにした。 そんな彼女の肩を誰かがつかむ。 振り返れば、クラスで威張っている少女だった。 一番関わりたくない女。 すごい嫌いな、嫌な女。 その女が後ろで悪魔の笑みを浮かべていた。 それに嫌な予感がした。 なにかが変わる予感が。
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