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「なに、これ‥‥‥」
布団の下には、横を向いてやや丸まった華奢な妹の身体。
その下腹部に、異様はあった。
まるでなにかを孕んでいるかのように、大きく膨らんでいる。
―――胎児を、宿しているかのように。
ぼくは致死量に達しそうな驚きの中に呆然となって、妹の細い腰と不釣り合いなお腹とを見比べた。
それの分も酸素を取り入れなければいけないのか、呼吸もいつもより少し荒い。
一目で弱っていることがわかるその姿は、妊婦というより栄養失調の子供に似ていた。
不当に搾取される弱者―――。
この世界には、ぼくと妹しかいない気がした。
寝ている間に吐き出したらしい潰れた毛虫を、窓から投げ捨てる。
それから急いで、伊沢先生を呼びに行った。
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