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「伊沢先生!純架が―――」
駆け込んだ診察室の中、伊沢先生は紙の山を崩し、その上につっぷして眠っていた。
寝息はすやすやと、ほんとうに気持ちよさそうだ。
「ちょ、先生っ!」
「ん?寝てないよ、起きてるよ‥‥‥」
そしてまた夢の国に旅立とうとするいい大人の耳をひっぱって、ぼくはどなった。
「すみかが大変なんです寝ぼけてないで起きてくださいっ!」
むく、とロボットの電源を入れたように、やっと身体を起こす。
まだ焦点の定まらない眼でぼくをとらえた。
「血液検査も異常なかったけど‥‥‥」
「とにかく診てください!」
伊沢先生の首に床にあった聴診器をひっかけ、押して隣の病室まで運ぶ。
ぼくは頭の端で、望めないであろうことを祈っていた。
「‥‥‥はぁ」
麻姫ちゃんが、どうかまだ起きていませんように―――。
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