ぼくの ウゴメく胎児

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「まずはエコーを撮ってみるから」 カルテに例の暗号じみた文字を書き足した後、そう言って伊沢先生と妹は機器のある部屋へ移ってしまった。 エコーというのは、たしか妊娠中に胎児の発育を診るためのものだ。 ぼくは手持ちぶさたになったけれどじっとしてもいられなくて、病室に戻った。 麻姫ちゃんはまだ、布団を頭までかぶって寝ている。 窓の外、太陽は高く昇っていた。 もう、起こしたほうがいいだろうか。 「麻姫ちゃん、起きて‥‥‥!?」 手を触れた瞬間に、気付いた。 ―――まさかそんな。 半分めくった布団を、一気に全部ひっぱがす。 「いない―――」 どうりで見つからなかった枕が、三つ縦に並べてあった。
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