ぼくの ウゴメく胎児

12/13
前へ
/68ページ
次へ
横に二人並んで、病室まで廊下を歩く。 今事情を聞きたいのは、もちろん妹のことだ。 でも、余計なことを言ってやぶへびになるといけない。 麻姫ちゃんの様子が普段どおりなので、あまり触れたくなかった。 「あー‥‥‥麻姫ちゃんのお父さんとお母さん、もう帰ってきてるの?」 「ううん。でも今日迎えにいくんだぁ」 それなら隠しとおせるかもしれない。 もっとも、麻姫ちゃんが妹の異常を見ていなければの話だけれど。 「あのさ、麻姫ちゃん―――」 「こんなところにいたのか、腥太くん」 そのとき角から、疲れて不機嫌そうな伊沢先生が出てきた。 ずっと探してくれていたのだろうか。 伊沢先生はぼくが注意を向けたと同時に不快の表情を消し、そしてただ事実を述べた。 「君の妹には、早急に手術が要る」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2323人が本棚に入れています
本棚に追加