ぼくの 一人称の物語

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その頃、病室で。 「こんにちはぁ、せーたくんのお母さん」 幸せそうな笑みが顔にはりついて、どんなに悲しくてもはがせない少女が言った。 「どうしてあたしとお話してくれないのー?」 「あ、麻姫ちゃんは火事で‥‥‥っ」 みっともないくらい震えて、今にも狂ったように叫びだしそうな女性に。 「ねぇ、あたしのお父さんとお母さんはどこぉ?」 「し、知ら、な」 女性はおびえた子供のように首を横に振る。 少女は横を向いた女性の頬に手を添えて、ゆっくりと前を向かせた。 びくり、と女性が身体を固くする。 「ねぇ、どこに‥‥‥やったのぉ?」 三日月のかたちに笑う、黒い眼。 もう首を振ることも出来ず、恐怖を受け入れざるをえなくなった女性は、小さく小さく息を吸い。 そして、吐き出した。 「ぃやあぁぁあああ―――っ!」
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