ぼくの 一人称の物語

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「腥太くん、どうして純架ちゃんが虫を吐くかわかるぅ?」 ぼくは首を横に振った。 伊沢先生でさえわからなかったのだから、ぼくにわかる訳がない。 「簡単なことだよぉ」 少しの屈託もない笑顔で、麻姫ちゃんは言う。 悪意なんてなおさらだ。 「普通に考えて、出てくるのは入れたからでしょー?」 「入れた‥‥?」 ぼくはオウムのように、ただ麻姫ちゃんの言葉を繰り返す。 実際ぼくは、オウムほどもその意味を理解していなかった。 「呑みこんだってこと」 「‥‥虫、を?」 妹が、そんなことをするだろうか。 女の子としては人並みに虫を嫌っていたし、だいたい好きだとしても呑みこむようなものじゃない。 「純架はそんなことしないよ」 「でも、したんだよ――させられた、かもしれないけどねぇ」 「‥‥どうして、そんなことを?」
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