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目を開けると朝になっていた。
思いきりのびをして、ソファで寝ていたことに気付く。
‥‥‥昨日、考えごとをしていたからかな。
どうやら風邪はひかずにすんだみたいだ。
「うわ」
ソファの背もたれに、大きくて鮮やかな色のバッタがいる。
触らないようにゆっくりソファから降りて、遠ざかった。
寝ている間に触ったかもしれないと考えると、気分が悪くなる。
まだ妹は寝ているらしい。
とりあえずシャワーを浴びにお風呂場へ行った。
お風呂場から戻ると、妹はもう着替えて歯を磨いている。
今日はワインレッドのオーバースカートだ。
「あの、さ」
目線を上げるだけで返事をする妹。
「今からお母さんのお見舞いに行かない?」
妹は歯ブラシをくわえたままうなずいた。
ここ一週間、ぼくは妹が首を横に振るのを見てないな‥‥‥。
がたん。
妹が突然、椅子を蹴倒して立ち上がった。
そのまま洗面所へ走る。
ただうがいをしに行ったわけではなさそうだ。
ぺっと吐き出した歯磨き粉の泡の中に、無数のイトミミズがのたくっていた。
「‥‥‥ぅえ」
なおもミミズを吐こうとする妹の背に手を置きながら、ぼくは決心した。
妹を、病院に連れていこう。
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