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* * *
「はいはーい。お二人さん。お取り込み中申し訳無いですけど、授業始まりますよー」
そう言って、いつの間にかトリップの世界から戻ってきた日向が凛と春季の二人の間に入ったのと同時に予鈴が鳴った。
「……へいへい」
おもしろくなさそうに呟いてズボンのポケットに片手を突っ込み、もう片方の手で頭を掻きながら春季は自分の席に戻っていく。
「ねぇねぇ、何の話してたの?」
と、凛の後ろの席から日向が何故かとても嬉しそうに聞いてきた。
「別に? 誰かさんがまたあっちの世界に行っちゃってるねーって言う話よ」
「何だ、つまんない」
凛が適当に誤魔化した返事を返すと、途端にその事には興味が無くなったのか、机の上に乗り出していた身を引いてしまう日向。
――つまんないって……自分の事でしょうが――
心の中でそう突っ込んでみたところで日向がそれに気付くはずも無く、それから放課後までの数時間、凛が憂鬱な気分をずっと引きずっていた事は言うまでもなかった。
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