憂鬱

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――そんなに残念がらなくても……―― と、口を開こうとした瞬間、今一番聞きたくない声が凛の耳に飛び込んできた。 「誰が鉄仮面なんですか?」 「あ、先生。おはようございまーす」 「おはようございます」 その声に振り返った先に立つ要に、日向はいつもの調子で挨拶をする。 要は日向に挨拶を返しながらチラリと凛の顔を盗み見た。 「お……おはようございます」 何事も意識しないようにすればするほど逆効果のようで、恐る恐る挨拶をする凛の声はやや上ずっていた。 「おはようございます」 要は凛にも挨拶を返し、そのまま二人を追い抜いて行ってしまう。 要の表情は一見いつもと変わらない物だったが、凛には自分達を追い抜いて行った要の背中がクスクスと笑っているようにしか見えなかった。 「珍しいね。鉄仮面の方から話しかけて来るなんて」 「あぁ……そういえばそうね。でも、自分のクラスの生徒がいたらさすがに挨拶位はするんじゃない?」 「んー……それもそうね。ところで凛?」 と、日向がまた凛の顔を覗き込んできた。
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