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走りながら三花のセリフが繰り返し頭を巡る。
『ゆず今日面接なんです。私、通訳たのまれたんですけど私も今日は面接があって…。それであなたに頼んでみたらって…。きっと昨日それを頼みたくてあなたの所へ行ったんです、でもゆずちょっと昔いろいろあったから素直になれないとこがあって…』
どれくらい走ったか、三花に聞いた事務所の前に着く。息を切らしながら中へ入ると、何人かの中に自信なくゆずゆがいた。
直秋はゆずゆの隣へドサッと座る。直秋の姿に驚くゆずゆ。
(どーして?)
「あんたの友達に聞いた。昨日、これ頼みたくて来たんやろ?」
直秋の汗に昨日の自分が恥ずかしく思える。
(…なんで?あたし昨日あんな酷いこと言ったのに…)
少し考え笑って
「俺、偽善者やから」
と言う。
ゆずゆは首を振る。
「次、鈴谷さんどーぞ」
面接官の呼ぶ声。
「呼ばれてるで」
直秋に促され立ち上がるゆずゆ。面接より直秋に伝えたいことがあるのに。
沈んだ顔のゆずゆに
「大丈夫やから」
と笑う直秋。やっぱりその笑顔にゆずゆはドキッとせずにはいられなかった。
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