彼女。

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その日 ゆずゆは施設の前で直秋を待っていた。 手には三花に貰ったあの日の写真。 一枚取り出す。 そこには楽しそうに笑う四人の姿。 直秋の笑顔を見て思わず微笑むゆずゆ。 しばらく待っていると通用口から人が出て来るのが見えた。 光一だっ。 足を一歩出したゆずゆはそこで足を止めた。 光一に続いて直秋と、透子の姿が見えた。 楽しそうに話している三人が見えた。 聴こえなくてもゆずゆには解る。唇の動き。 『どこいく?』 『いつものとこでええやろ?』 『うんっ』 『直秋の奢りな』 『やったーっ』 『アホかっ』 『もー、直秋大好きっ』 『アホっ』 ゆずゆには入り込めない世界がそこにはあった。 ゆずゆは黙ってその場から逃げ出していた…。
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