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芽生え。
次の日。
仕事が休みだった彼=直秋は彼女=ゆずゆの大学にいた。学生証を頼りにゆずゆを探す。
「なんやねん大学って…、無駄に広すぎやっちゅーねんっ」
文句を言いながらも広い構内を探し歩く。
すると前の校舎から見覚えのあるゆずゆが現れる。ゆずゆに歩み寄り
「おい」
と声をかけるがゆずゆは前を通り過ぎようとする。
「おいってっ」
ゆずゆの肩を掴む直秋。突然の事に驚いて振り向くゆずゆ。あまりの驚きぶりに逆に驚く直秋。
「そんな驚く事やないやろ…?」
それでも怪訝そうな顔で直秋を見るゆずゆに、一つため息をついて昨日拾った袋をポケットから出してゆずゆの前に差し出す直秋。
「これ、落としたやろ?誰のかわからへんから中、見させてもろたで」
また驚き嬉しそうに受け取るゆずゆ。そして頭を下げて
(ありがとう)
と手話で言う。
「え…」
ハッとし、急いでカバンからノートを出して「ありがとう」と書くゆずゆ。
「自分、聴こえへんの?」と、手話をつける直秋。ゆずゆは驚いてうなずく。
(手話、解るの?)
「ちょっとな。昔勉強した」
(そう)
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