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「コオリ――っ!起きてっ!」
バンッとかなりうるさい音をたて、ハチミツはコオリの寝所の襖を開け放つ。
薄暗い部屋の中心には、布団にくるまったまま微動だにしないコオリの姿。
ハチミツは部屋の障子を次々と開け放った。
段々と陽の光が部屋の中を明るくしていく。
ピクリとコオリが動く。
眩しさに眉をしかめているようだ。
「コオリ。起きてっ!朝だよっ!お天道様が笑っているよ、っていうか大変なの!早く起きてってば!」
大声でハチミツが叫んでも、コオリはもぞもぞと光の当たらない箇所に移動していくだけで、全く起きる気配がない。
ハチミツはツカツカとコオリのいる場所に行き、ガバリと布団をめくる。
驚いた顔をしているコオリにハチミツは言う。
「おはよう、コオリ」
コオリが目覚めたと思い、ハチミツは少し声量を落とす。そしてコオリの乱れた髪を触った。
「えっ?」
その瞬間。
グイッと腕を引っ張られ、ハチミツは布団の中に引き込まれてしまう。
コオリはハチミツを抱きしめながら軽い寝息をたてている。
「ちょっ!コオリ!?」
バタバタとあがくハチミツ。
しかしコオリはしっかりとハチミツを抱きしめていて、体はちっとも動かない。
「ハチミツ」
すぐ耳元にコオリの吐息とともに名を呼ばれる。
あまりの近さにハチミツは赤面した。
「ハチミツ。俺、まだ眠い」
コオリの語る囁きに似た声は、寝言に近いとわかっていても、ハチミツの胸をドキドキさせるには充分だった。
「コオリ~~」
困ったようにハチミツは嘆く。
そこに先程の侍従と同じようにハチミツの騒音に叩き起こされた侍女が、そっと開き放しの襖から顔を覗かせる。
「睦様。どうかいたしましたか?」
その言葉が言い終わらない内に侍女は頬を赤らめて、
「失礼しましたっ」
慌てた口調で言うと襖を閉めようとする。
「ちがっ!カイヤっ!!違うのっ。助けてちょうだいっ!」
ハチミツは顔見知りの侍女だった為、藁にもすがる思いで侍女の名を呼び、助けを請うた。
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