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「う~ん……ハチミツ~。機嫌直してよ~」
困ったように笑いながら、コオリは目の前に座っているハチミツに声をかける。
ここは食堂。
コオリとハチミツの前には美味しそうな湯気と匂いをたてる朝ごはんがあった。
しかしハチミツはしかめっ面のまま箸を手に取ろうとしない。
コオリの寝所で侍女の誤解を解いたハチミツは、侍女と数人の侍従の助けを借りて何とかコオリの腕から救出された。
それでもコオリは目覚めなかったのだが……。
コオリが目覚めたのはその救出劇の十分後。
突然、目覚めてキョロキョロと辺りを見回し。
「あれ?何でハチミツがここにいるの?」
とキョトンとした表情で呟いたのだった。
あれからハチミツはしかめっ面を持続したまま、コオリと口を聴いていない。
「ほらっ!せっかく美味しそうな朝ごはんなのに冷めてから食べたら作ってくれた厨房の者に悪いよ」
コオリの言葉にピクリとハチミツの眉が動く。
確かに朝ごはんに罪はない。
それに朝からパタパタと走り回ったり、ドキドキしたりしたので、ハチミツの意志とは無関係にお腹の虫は苦しそうなうめき声で鳴いていた。
「ねっ。機嫌直してご飯を食べようよ」
コオリの嘆願にハチミツは静かに手を合わせて、黙々と食べ始めた。
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