第一章

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羽音を響かせ二羽が飛び立つ。 「あんっ」 軽やかな羽音をハチミツは聞き、悔しそうに呟いた。 「ハチミツ?誰と話していたの?」 後ろの茂みから現れた呑気な声のコオリを、ハチミツは思わずキッと睨んでしまう。 その気迫にコオリは目をパチクリさせた。 「そっか。あの白い鳥達も謎な存在だね」 気持ちを落ち着かせたハチミツから、事情を聞いていたコオリが言う。 「そう。何故あの祠の日記が全て文月の月で止まっているのかも謎のままだし」 ここ毎日ハチミツとコオリはあの祠へ行き、日記を読み返していた。 この世界は何故か他の暦神との交流、繋がりを禁止している。 だから過去の、今は存命していない暦神といえども、彼ら彼女らの生の声、気持ちが書かれている日記はとても貴重な情報だった。 そしてその日記を読んでいて、コオリが気が付いた。 過去の暦神の日記は全て『文月』から始まり『文月』で止まっている。おおよそ一ヶ月程で次の代の暦神の日記に交代しているのだ。 解けない謎があるのは心がザワザワする。 あの祠は文月の月のみ見えるとでもいうのか? それともあの祠を見つけたら一ヶ月以内に死んじゃうとか? そんな愚にもつかない事だけ想像してしまい、ハチミツの心を少しだけ重いものにしていた。 「はあ……」 溜息をつくハチミツの頭を撫でコオリは言う。 「文献をあさってみたけど、やっぱり過去、ここで護られていた暦神の記録はなかったよ。もしかしたら隠されているのかもしれない。どこかには絶対あると思うから引き続き探しておくし。だからあんまり落ち込まないでよ」 頼もしいような……頼もしくないような……。 コオリは確かに頭も良いし、頭の回転も早い。でも少しだけ呑気なのよね……。 ハチミツはそんな思いを抱きながらコオリを眺める。 「そういえば……ハチミツ、俺に用事があったんじゃないの?朝はそれで寝所にまで来たんだろ?」 コオリの問いにハチミツは「あっ」と言って、懐から一枚の手紙を取り出した。
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