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「夢を見たの。藍色の長い髪のキレイな子がいて……男なのか、女なのかはわからなかったけど、私と同じ年くらいに見えた。その子は静かに一通の封筒を差し出してきて、私はそれを受け取った。何だろう?って封筒に意識を移した瞬間、夢から目覚めたの。でも手の中には、夢で手渡されたこの手紙を、しっかりと握りしめていた」
コオリはハチミツが差し出した手紙を受け取る。
カサリと渇いた音とともに微かなお香の匂いが鼻孔をくすぐった。
「この香は……」
「良い匂いだね。この匂い知ってるの?コオリ」
怪訝な顔をしているコオリにハチミツは尋ねる。
しかしコオリはハチミツの問いには答えずに、無言で手紙を開く。
『前略
久しいな。コオリ。
いや、今は睦か。
そして一月姫。始めまして。
僕は如月の主【二月(フタツキ)】だ。現世の名は【トケイ】
内密に相談したい事があって文をしたためている。
もうすぐ大泰祭(ダイタイサイ)が行われるだろう?
詳しくはその時に話をしたいと思っているが、まずはご挨拶をと思ってね。
コオリ。僕が暦神になっていて驚いたかい?
そして暦神同士の交流が禁止されているのに、何故接触してきたのか?って考えているんだろうな。どうして接触できたのかも。
コオリはきっと眉をしかめているんだろうな。君は感情に素直だから』
ハチミツはそこまで読んで、そっとコオリを見る。
確かにコオリはしかめっ面をして、手紙を読んでいた。
コオリはハチミツの視線に気が付き、顔をあげて苦笑いをする。
「知っている人なの?」
「うん。トケイは俺と同じ王子だよ、隣国のね。確か俺のふたつ下だったからハチミツのひとつ上だね。小さい頃はよく遊んだりしてたんだ。藍色の髪に真っ黒な瞳で、いつもこの手紙から漂う白檀の香を身にまとっていた」
「そうなんだ」
ハチミツの呟きとともに、コオリはまた手紙へと視線を移す。
『今はまだ詳しく語れないけど、僕は【変化】を起こしたいと考えているんだ。
それは僕だけの力ではできない事。だから君達の力をお借りしたい。
君達以外の十の暦神、全員に声をかけている。
詳しくは大泰祭で。
また主を通して連絡をする。
安寧二十年 文月
如月の主 二月』
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