342人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
「大丈夫だよ、コオリ。まだまだ慣れないけど私は大丈夫。だから、コオリがそんな哀しい顔をしなくていいよ」
ハチミツは抱きしめられている腕をほどきコオリを見上げる。
そして辛そうに目線を下げるコオリの頬を、両手で包みそう言った。
今にも泣きだしそうな傷付いた表情。
コオリは優しい。
絶対に私よりコオリの立場の方が辛いはずなのに……。
私はしょせん幸せな村娘でしかなかった。父も母も生きてはいるけど、私が暦神だと知って喜んでいたし……。
でもコオリは?
彼の手の中にはたくさんの護るものがあった。
次代の君主としての使命や誇り。
失ったものの数は私よりコオリの方が多いはず。
なのに彼は私を想い、傷付く。
私の少ない失ったものに対して……。
「コオリ」
優しく名を呼ぶ。
フワリと優しく頬に口付けをする。
どうか傷付かないで……。
そんな想いを乗せて。
「うん。ごめんね」
謝るコオリにハチミツは無言で首を振った。
最初のコメントを投稿しよう!