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「それより、トケイ君のしたい『変化』って何なんだろうね」
ハチミツが話題を変えるかのように、明るくコオリに問い掛けた。
コオリも表情を変え、少し考え込む。
「わからないな。トケイはちょっと変わってるから」
「変わってる?」
「うん。無邪気かと思うと複雑だし。素直かと思うと天邪鬼だし。ひと言で言うと策略系?」
「いや。疑問符つけられても私はトケイ君の事、知らないし」
苦笑しながらハチミツは言う。
「でも暦神になっていたのは知らなかったな」
コオリは言いながら、また視線を下げる。
ハチミツはそんなコオリを慰めるように髪を撫でた。
「しょうがないよ。私達は世間から隔絶された存在だし、情報も入ってこないんだもん」
暦神は幽閉同然に閉じ込められている。この館が建つ山の中は自由に歩けても、山を降りることは叶わない。
力のある術士が張った結界が山を包み込んでいるからだ。
どちらかというと暦神を逃がさない為というよりかは、不審者が入ってこないようにする為の結界なのだが、当の暦神からしてみれば、同じ事。
当然、街の噂や情勢などの情報も耳に入る事は少ない。
「トケイ君はどうやって私の夢の中に入ったのかな?夢の中の出来事なのに、どうしてこれが私の手の中にあったのかな?」
ハチミツはコオリが持つ手紙を見ながら呟いた。
「過去の文献で読んだ事があるんだけど。『夢渡り』っていう力を持った暦神がいたんだ。その名の通り、夢を渡り、夢を見ている相手と会話をしたり、物を渡したり、未来を見れたり」
コオリが指で唇を触りながら言う。考え込んでいるときのコオリの癖だ。
「トケイ君の力は『夢渡り』なのかな?」
「たぶんね。でも特定の誰かの夢を渡るには確か条件があったはずだよ」
「どんな条件?」
「相手の姓名を知っている事。もちろん『真子人名(マコトナ)』もね」
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