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真子人名(マコトナ)とは、通過儀礼式の時に授けられる名前の事。
睦月の暦神であるハチミツの真子人名は『一月』。コオリは『睦』となる。
相手が睦月の暦神なのを知っていれば、真子人名はわかったとしても……ハチミツの姓名をトケイが知っていた事に疑問は残る。
情報が制限されてしまう暦神だ。どの地にどの暦神が守られているかの情報も、誰が暦神なのかも秘密にされている。
「私の姓名。ハチミツ・スビリチアルっていう名前?」
コオリは頷く。
「ハチミツが睦月の主なのを知る人は少ないだろ?トケイが俺の夢に現れたのなら、何の不思議もないんだけどさ。俺のコオリ・グダンド・ピアニシモの名は知っているし、真子人名もわかるだろうし……」
コオリの後にトケイが暦神になったのなら、コオリが睦月の従者なのを知っているのは道理なのだ。
コオリは大国『暮国』王のひとり息子だ。
さすがに暮国の次代の君主であったコオリが急にいなくなる、そんな事態にする訳にはいかず、彼が暦神の従者であったことは広く知れ渡ってしまっているからだ。
だからこそ、普通の村娘だったハチミツの姓名をトケイが知っている事が不思議になってくる。
う~ん、と腕を組んでコオリは考え込む。
「考えてもわからない事は考え込むだけ無駄だよ?大泰祭で会った時にでも聞いたらいいじゃない。それより、トケイ君の言う『変化』の方が気になるよ」
変化……暦神である彼は一体何を望んでいるのだろうか?
ハチミツにも望む変化はある。
それは十五才の恋する乙女であれば、月並みな事かもしれないが、切実で真剣だ。
成長期、と言われればそれまでなんだけど……。
ハチミツは薄手の白い衣に被われた自分の体を見る。
膝丈の着物から突き出す膝小僧はカクカクとしていて、女の子らしい丸みはない。
浮き出た鎖骨の下には、あるべき膨らみはたいしてない。
細身……。
確かに丸々太った体よりは良いのかもしれないけど。
あまりに丸みのない少年のような自身の体を、ハチミツはあまりお気に召していないのだ。
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