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いきなり黙り込んで、真剣な表情で自分の体を凝視し始めたハチミツに、コオリは思わず吹き出す。
「ハチミツ。トケイの言ってる変化は、決してそういう事じゃないと思うんだけど?」
ハチミツはコオリに突っ込まれて、初めて自分の視線と思考に気付く。
カァァという音が聞こえそうなくらい、ハチミツの顔に赤みが差してくる。
やだ。コオリの前で真剣に悩んじゃってた……。
「馬鹿だなあ」
コオリがハチミツを抱きしめる。
そう。コオリに抱きしめられる回数が増えれば増えるだけ、ハチミツは変化を望んでしまう。
「だって。骨と皮だけじゃない……全然女の子らしくない」
「俺には十分柔らかいし、俺の中では十分女の子だよ」
また、この男は……。
口がうまいと言うか。
でも。納得なんかしないけど。
これはこれで良いか。
ハチミツはコオリに守られて、包まれて、幸せな気分で目を閉じた。
この変化のない日常の中で、彼の望む変化は何なんだろう。
確かに考えたってわからない。
それでも思いはそこに行く。
肯定し続けていく中で、変化はあるのだろうか?
本当は、こんな考えはダメなんだ。『人々の幸せ』を考えたら私は肯定し続ける事に疑問を持ってはダメ。
わかっていても『変化』という言葉は、とても魅力的で……
ハチミツの心を揺さ振り続けていた。
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