第二章

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「うわあ」 ハチミツが感嘆する。 今は夕方。 馬車は予定通り、大泰祭が行われる暮国の首都・重に到着していた。 広い道の左右には白く装飾のない家が立ち並び、夕日の橙色を映し穏やかな炎のように光っている。 目の前にそびえ建つ王宮も例外ではなく。 夕日の色が映えるように設計されているのか、一際雄大な夕日を身に映し幽玄な世界を演出していた。 「すごい……」 ハチミツはこのような人工的な『美』を見るのは初めてだった。 「良い時間帯に着けて良かったね」 コオリがニコニコしながらハチミツに言う。 「この時間の王宮は見慣れた者でも感動するんだ」 「懐かしい?」 ハチミツが目線を小窓からコオリに移し尋ねる。 この『重』はコオリの故郷だ。見事な王宮はコオリの生家。あの場所で産まれ育った。 コオリの胸に宿る感情は一体どんなものなのだろうか? 「ん――。懐かしいよ。純粋に綺麗だなって思うよ」 「それだけ?」 コオリの簡素な答えにハチミツは拍子抜けする。 「うん。俺の心はもうこの地に根付いてないから。久しぶりに洗練された綺麗なものを見て、嬉しいとは思うけどね。こういう造り込まれた美しいものは館にはないから」 コオリが目を細めハチミツに説明しているとき、馬車がゆっくりと速度を落とした。 そして重みのある、しかし澄んだ鐘の音が響く。 それは音階を持っており、10秒程の短い曲を奏でていた。
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