第二章

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「俺らが一番乗りかと思っていたけど違ったみたいだね」 コオリとハチミツは神殿の入口に向かい歩いていた。 コオリの視線は斜め左。 そこにはコオリ達が乗ってきたのとは違う馬車があった。 夕闇が馬車の色をわかりづらくしている。 微かにわかるのは黄色に近い色だということ。 「弥生かな?」 コオリが呟く。 「どうしてあの馬車が、弥生の暦神のだと思うの?」 ハチミツの問いに、コオリは回れ右をして自分達が乗ってきた馬車を指差す。 「俺達の馬車の色は何色だった?」 「紺碧……あっ」 ハチミツが気付く。 「そう。さっきのタナ先生の話にあったよね。弥生の色は確か………萌黄」 「ここに来る前から……すでに『しきたり』の中にいたんだ」 ハチミツの呟きにコオリは頷く。 「勉強してみるとけっこう面白いもんだよ。各暦神の個性みたいなものがあって。人々と約束をした『泰神』の意志みたいなのを感じて」 ふたりは神殿の入口に立つ。 コオリは神殿を見上げた。 少し懐かしむ――それは切なさに似た――表情をする。 でもそれは一瞬で。 コオリは神殿の入口の両側に立つ門番に軽く会釈をし、中に入っていった。ハチミツも少しおどおどしながらコオリの後に続く。
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