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「俺らが一番乗りかと思っていたけど違ったみたいだね」
コオリとハチミツは神殿の入口に向かい歩いていた。
コオリの視線は斜め左。
そこにはコオリ達が乗ってきたのとは違う馬車があった。
夕闇が馬車の色をわかりづらくしている。
微かにわかるのは黄色に近い色だということ。
「弥生かな?」
コオリが呟く。
「どうしてあの馬車が、弥生の暦神のだと思うの?」
ハチミツの問いに、コオリは回れ右をして自分達が乗ってきた馬車を指差す。
「俺達の馬車の色は何色だった?」
「紺碧……あっ」
ハチミツが気付く。
「そう。さっきのタナ先生の話にあったよね。弥生の色は確か………萌黄」
「ここに来る前から……すでに『しきたり』の中にいたんだ」
ハチミツの呟きにコオリは頷く。
「勉強してみるとけっこう面白いもんだよ。各暦神の個性みたいなものがあって。人々と約束をした『泰神』の意志みたいなのを感じて」
ふたりは神殿の入口に立つ。
コオリは神殿を見上げた。
少し懐かしむ――それは切なさに似た――表情をする。
でもそれは一瞬で。
コオリは神殿の入口の両側に立つ門番に軽く会釈をし、中に入っていった。ハチミツも少しおどおどしながらコオリの後に続く。
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