第二章

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コオリが十二個の色の宝石が飾られた扉を開けた。 まずハチミツの目に飛び込んできたのは、空から降り注ぐ様々な光の色。 巨大な空間。白い壁。白い床。壁は丸い曲線を描き、何階分かわからないほどの吹き抜けの高い天井に続いている。 ぐるりと丸い天井には、ハチミツの知らない模様が描かれている。 様々な色のガラスを何千枚と繋ぎ合わせ作られた模様の天井。 そこから終わりを迎えようとしている、微かな夕焼けの光量が降り注ぎ、白い壁と床に色を写していた。 そしてその色とは別に、空間のほぼ中央の床には十二の色の円が灯っている。 それは十二の花弁を持つ花の形を示し、真ん中のみが色を持たずに輝いていた。 「第一番目の御子神『睦月』様。紺碧の御目(みめ)を持ち、羽音を聞く御耳(みみみ)を持ち、その御口(みくち)は様々な音色を奏でられるのでしょう。さあ、ご挨拶を。さあ、あなた様を創られた大泰神の御目元(みめもと)にお来し下さいませ」 突然、誰の姿もないのに朗々とした声が響く。 男にしては高すぎ、女にしては低すぎ、子供にしては覇気のない不思議な声。 ハチミツはキョロキョロと辺りを見回す。 「どこから話してるの?というより誰?」 不安げに呟く。 コオリはハチミツの耳元で囁いた。 「今の声は神官だ。どこにいるのかは俺にもわからないけど、気にしなくていいよ。あの人達は滅多に人前には現れないから。さあ、ハチミツ。再会の儀式だよ」 「再会の儀式?」 ハチミツはコオリを見るために横を向く。 背の高いコオリは少し屈んで話していたので、頬が触れ合える程の近さで目が合った。 ハチミツの心拍数が上がる。 しかしコオリとの距離が近いことよりも、聞き慣れない単語の方が気になってハチミツは頬を朱く染めながら聞いた。 「何の……儀式なの?」 そんなハチミツの様子にコオリは微かに口元を吊り上げる。 そしてハチミツの背をゆっくり押し、十二の光が灯る床へと歩き出した。
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