第二章

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ふたりは半開きになった扉から本殿の中を覗く。 天井には変わらず見事なガラスの模様。 しかし天井から差し込むのは月のぼやけた明かりのみ。その付近しか見ることは叶わない。 あとは闇。 月の光が灯る付近は柔らかな明るさに照らされ、それ以外はまったりとした闇が広がっており、中がどんな状態なのかは判別ができない。 その微かに明るい月の光の中、本殿中央の床にはたったひとつの色が残っていた。 泰神の目……。 その色は勾玉の形で紅と白に分かれていた。 「如月の色。まだトケイ君は来ていないのかな?」 「ハ、ハチミツさんは、如月の主をご存知なのですかっ!?」 コノハナがものすごい勢いで、ハチミツへと詰め寄った。 「コノハナさん。シイーッ!声が響いちゃうよっ」 「ト、トケイ君だなんて親しげにお、お呼びし、して……」 コノハナは微かに震える。 顔も少し青ざめているようだ。 「コノハナさん?」 ハチミツはコノハナの変化にびっくりしながらも、震えるコノハナの肩に触れる。 小さな肩。薄い背中。 か弱さが前面に出ている華奢な体。 「お、お知り合いで、いらっしゃるのですか?」 「ううん。私の片割れ……睦月の従者、コオリって言うんだけど。トケイ君はコオリの幼なじみみたいなものなの。それで何となく親近感が湧いていて、そう呼んでるだけよ。私は夢で二回会っただけ」 ハチミツはまだ震えているコノハナの気を落ち着かせるように丁寧に説明する。 「そう……ですか。ハチミツさんもお会いになっているのですね」 コノハナは先程よりかは落ち着いたみたいだが、今度は少し落ち込み気味に呟く。 「コノハナさんの夢にもトケ……如月の主は現れたんだ?」 「よろしいのですよ。ト、ト、トケイ……く、君とお呼びしても……」 「いやっいいっ!私は知り合いでも何でもないんだしっ!」 コノハナの台詞に殺気めいたものを感じてハチミツは慌てて否定した。
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