第二章

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コノハナはハチミツのその姿を見て、冷静さを取り戻したのか、苦笑いに似た表情をする。 「ハチミツさん。取り乱したりして申し訳ございませんでした。はい。わたくしの夢にもトケイ様は来られました。一回目は白檀の香の手紙を渡しに。二回目は……従者に内緒で考えてみて欲しいことがあると告げに」 「私と一緒だね」 ハチミツの頷きの後、しばらく静寂が訪れた。 コノハナは口をつぐみ、ハチミツも黙り込む。 そこにまた強い花の香りが漂ってきた。 どこからだろう? そしてハチミツが鼻を効かそうと鼻孔を広げた瞬間、別の香りが鼻をかすめる。 「白檀の香……」 ふたりは同時に呟き、そうっと本殿の扉から中を覗いてみる。 いつのまに中に入ったのだろうか。本殿に差し込む月の光が藍色の艶やかな髪を映し出していた。 トケイは長い髪をなびかせ、紅白の光の円に座る。 そこに背丈の小さい少女のような影がトケイの横に立った。 「愛しき第二番目の御子神」 どこからともなくまたあの不思議な声が響く。 「……トケイ様」 ハチミツとともに再会の儀式を覗くコノハナが呟いた。 その短い言葉はとても潤んでいて、まるで圧縮した感情が込められているかのようにハチミツの心に響いた。 「……コノハナさんって、トケイ君のこと……好きなの?」 ハチミツは思わず質問をする。 「えっ?え……えっとお……」 みるみる内にコノハナの頬が赤く火照りだす。 闇の中であってもわかるほど赤く、コノハナは熱を持つ頬を両手で押さえた。 ハチミツはコノハナのその可愛いらしい反応にクスリと笑う。 コノハナは真っ赤な顔のまま、少し口をとがらし、吃りながら言い訳をする。 「す、す、好きとか……そ、そんなんじゃあ……ありませんわ。ただ……夢に出てきたトケイ様のお姿がわ、忘れられなくて……後でお会いできるのはわかっていたのですが、早くそのお、お姿を見たくて……馬鹿みたいに……本殿の傍でま、待っていただけです」
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