第二章

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そこに「ウタ!」と、トケイの叫ぶ声が聞こえた。ウタと呼ばれた幼子は振り向き、いーっと顔をしかめて叫び返す。 「もうウチの出番は終わったやろ?こんな夜中に体力使うことやって疲れたわっ」 「おまえが……逃げ回っていたから、こんな時間になったのだろう?……そこに誰かいるのか?」 トケイの言葉にコノハナはびくりと震え、ハチミツの手を掴み一目散に逃げ出した。 「ちょ、ちょっと!コノハナさんっ」 突然の方向転換にハチミツが慌てた声を出す。 そして逃げる瞬間、扉の隙間から人型に光っていた場所をチラリと見る。 しかしそこにはもう何もなく。 天井から差し込む月光だけが輝いていた。 「ハアハア」 荒い呼吸を繰り返すふたつの声。しばらくコノハナに連れられ、走りにくい着物で全力疾走した結果、ふたりはいつのまにか神殿に面して作られた庭に出ていた。そして庭に建てられている吹き抜けの庵の中で必死で呼吸を整えている。
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