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ハチミツが声の主を確認しようと視線をあげる。
すると、荒々しい足音とともに少年がコノハナの細い手首を持ち上げていた。
「こんな夜中に何をしていたんだっ!?」
怒りを混じらせた鋭い詰問に、コノハナは泣きそうな声音で呟く。
「ツルミ……」
「どうして、おまえはフラフラフラフラ……!心配するオレの身にもなれよっ!目が覚めたらおまえはいない。花の呼気を頼りに探しまわったんだからな!」
ハチミツと似た褐色の肌。とても短い白に近い金の髪をツンツンに立てている少年は、その薄い水色の瞳に怒りをたたえ、乱暴な仕種でコノハナの手首を握りしめる。
あまりに手荒なその行動にハチミツは驚き、思わずツルミの腕を掴んでしまう。
「ちょっとっ!乱暴すぎるわ!手、離してあげて!」
「ハア?おまえ誰だ?」
感情をあらわに突っ掛かるツルミ。ハチミツは少しムッとしながら言う。
「睦月の主のハチミツよ!あなたは弥生の従者かしら?心配するのはわかるけど、コノハナさんが可哀相よ」
そしてコノハナの手首を掴んでいるツルミの手を解こうと力を入れた。
しかしツルミは面倒くさそうに自分の腕にかかるハチミツの手を振り払う。
「外部は黙れ。これはオレとコノハナの話だ」
「なっ!」
あまりの言いようにハチミツは目を見開き、再び文句を言おうと息巻いたとき。
「ハチミツさん。良いのです。わたくしが悪いのですから……ツルミに心配をかけてしまったわたくしが……」
しかし、ハチミツを止めたのはコノハナの弱々しい声であった。
ツルミは鼻にしわを寄せ、面白くなさそうな顔をすると、コノハナの腕を掴んだまま歩き出した。
「コノハナさんっ!」
「あっ!今日はお騒がせして申し訳ありませんでした。またお話して下さいませねっ」
そんな声をハチミツにかけ、コノハナとツルミは庭から神殿の方角へと消えていく。
ひとり取り残されたハチミツ。
花の呼気を頼りに探した……とツルミは言っていたっけ……?やっぱりあの花の香りはコノハナさんの吐く息なんだ。
なんだかよくわからない気持ちでいっぱいになって混乱しているハチミツは、ふとそんなことを思いながら深い溜息をついた。
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