第三章

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「今日は客が多い日だな」 タナがパラパラと机の上にある本をめくりながら言う。 「俺たち以外にも、誰か訪ねて来られたんですか?」 コオリの問いにタナは視線を部屋の奥に向けた。 「おい、クソガキ」 「酷いな、元教え子にたいしてその呼び方はないでしょう?」 部屋の奥から藍色の長い髪を揺らし、柔らかい低音の心地良い声を響かせ、少年が出て来る。 「トケイ……」 「久しぶりだね、コオリ」 如月の主であるトケイがにこやかな笑顔で挨拶をした。 まさか、こんな場所で会うとは思っていなかったので、動揺するコオリ。 「何を……していたんだ?」 動揺を隠すこともできず、コオリが質問をした。 トケイは笑顔のまま、大袈裟に肩をすくめる。 「かっての先生にご挨拶をしていただけだよ。タナ先生は僕の家庭教師だった人だもの。コオリ……そんなに警戒しないでほしいな。久しぶりに幼なじみ同士が会えたんだしさ」 「そうそう。わざわざ俺様に会いに来てくれたんだと」 タナが興味なさげに、どちらかというと迷惑そうに合いの手を入れる。 「タナ先生がトケイの……というとハチミツの姓名を教えたのはタナ先生ですね?」 「ああ。バレたか。こういうときだけ頭の回転が早いんだから敵わんな。おいおい、睨むなよ、コオリ。害がないと判断したから教えたまでだ」 タナは悪びれずにそう肯定し、生真面目なコオリに言う。 謎であったハチミツの姓名をトケイが知っていたこと。タナとトケイが知り合いなのであれば、その謎も解ける。夢の中であれど、トケイはいつでもタナに会いに行くことができるのだから。 しかしタナが睦月の主の家庭教師になったことを、トケイは何故知っていたのだろう?また別の疑問がコオリの中に起こる。 「こいつはな、暦神になってから、たびたび俺の夢ん中に来るようになったんだよ。そんときに姫さんを教えることになったって言ったことがある」 コオリの中の疑問を察したタナが説明する。 タナの説明にコオリは頷くが、苛立ちを表す口調で詰問した。
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