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二人は再び神殿の廊下を歩いていた。
神学室からの帰り道。
ハチミツは少し疲れた表情、コオリはいつもの少しだけ笑みを浮かべたような表情。
「タナ先生って……やっぱり酷い」
ハチミツは眉間にシワを寄せて、呟く。
頭の中には儀式に必要な手順や情報がぎっしり。
タナはハチミツ達が知りたい情報を五分程度でまくしたて、必要なことは伝えたとばかりに、ハチミツ達を早々に追い出したのであった。
「今日のタナ先生は優しすぎるくらいだよ。俺が質問したら、いつも中途半端な情報しかくれないもの。時間は短かったけど、丁寧に必要な情報はくれたしさ」
ハチミツとは逆の感想を言うコオリに、ハチミツはまた眉根を寄せる。
「コオリはさっきの話、全部覚えたの?」
「うん」
ハチミツの質問を肯定し、コオリはニヤリと笑う。
「やっぱり、ハチミツはもう少し勉強してる方が良いよ。頭の中でまとめる力がつくからね」
そんな嫌味に似た台詞をはくコオリに、小さい声で「うるさい」とハチミツは呟き、少しだけ歩みを早めた。
そんなハチミツの後ろ姿を眺め、コオリは肩をすくめる。
そのとき「あっ」というハチミツの呟きが聞こえ、いきなりハチミツは走り出した。
その後を追うコオリは、穏やかな春の花の香りを嗅ぐ。
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