第四章

2/12
342人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
    二人は再び神殿の廊下を歩いていた。 神学室からの帰り道。 ハチミツは少し疲れた表情、コオリはいつもの少しだけ笑みを浮かべたような表情。   「タナ先生って……やっぱり酷い」   ハチミツは眉間にシワを寄せて、呟く。 頭の中には儀式に必要な手順や情報がぎっしり。 タナはハチミツ達が知りたい情報を五分程度でまくしたて、必要なことは伝えたとばかりに、ハチミツ達を早々に追い出したのであった。 「今日のタナ先生は優しすぎるくらいだよ。俺が質問したら、いつも中途半端な情報しかくれないもの。時間は短かったけど、丁寧に必要な情報はくれたしさ」 ハチミツとは逆の感想を言うコオリに、ハチミツはまた眉根を寄せる。 「コオリはさっきの話、全部覚えたの?」 「うん」 ハチミツの質問を肯定し、コオリはニヤリと笑う。 「やっぱり、ハチミツはもう少し勉強してる方が良いよ。頭の中でまとめる力がつくからね」 そんな嫌味に似た台詞をはくコオリに、小さい声で「うるさい」とハチミツは呟き、少しだけ歩みを早めた。 そんなハチミツの後ろ姿を眺め、コオリは肩をすくめる。 そのとき「あっ」というハチミツの呟きが聞こえ、いきなりハチミツは走り出した。 その後を追うコオリは、穏やかな春の花の香りを嗅ぐ。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!