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「そういえば……ハチミツさん、あのとき無事にお部屋に戻れたのですか?」
庵の内部にある長椅子に座った途端、コノハナが尋ねた。
ハチミツは「なんとか……」と苦笑い。
「暦神の主の力があるじゃない?私はモノの語る言葉がわかるの。だから、何千年という長きにわたって建つ神殿の柱や壁が語る道標を辿っただけ」
少し迷っちゃったけどね、と最後に言い、ハチミチは舌を出す。
「そのようなお力があるのですね」
コノハナは大きな瞳を見開き、感嘆の声を出す。
「コノハナさんの力ってなあに?」
無邪気に尋ねるハチミツにたいして、コノハナは視線を下にさ迷わせた。
「わたくしの力は……」
そして、言いにくそうに言葉を切り、ちらりとツルミを見る。
「もしかして……コノハナさんの吐く息の匂いに関係してたりする?ツルミは『花の呼気』って言ってたよね?」
ツルミはあの夜の自分の失言に気付き、しょうがないと言う風にコノハナに頷いた。その反応を見て、コノハナは顔を上げ、ハチミツに答える。
「わたくしの力は……ハチミツさんのおっしゃる通り、植物に関係しています。私がいるだけで……植物が元気になるのです」
「……良い力だと、思うけど……?そんな、言いにくそうにする力なのかな?」
ハチミツの素直な疑問にまたもやコノハナは黙り込む。
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