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「……ツルミは少し特殊な生い立ちですので」
それだけを小さな声で言った後、コノハナは黙り込む。
もう続きを話すつもりがないのだということがわかって、コオリも口を閉ざした。
そして話題を変えようと思い、別の質問をコノハナにする。
「そうだ。ハチミツ以外の主に聞きたいことがあったんだけど」
コオリの前ふりに、コノハナは首を少し傾げる。
「コノハナさんの夢にもトケイは現れた?」
コオリの口からトケイの名が出ただけなのに、みるみるうちに赤くなっていくコノハナの頬。
やがて顔は俯き、コノハナから、花の香りが匂い立つ。
コオリは「おや?」という表情で、コノハナの赤く熱を持つ耳を眺めた。
「あ……はい。ト……ケイ様は、現れました……二度程……」
やがて、呟き程に小さい声でコノハナが言う。
そのコノハナの変化にニヤリと口許だけで笑い、しかしコノハナから出た「二度程」という言葉にコオリは眉を寄せ、ハチミツを睨んだ。
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