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「ハチミツ。俺が聞いているのは手紙のときの一度だけだけど……君のところにもトケイは二度現れたのかい?」
口調は変わらない。けれどハチミツにはわかる。
コオリが不機嫌になりつつあることが。
「え……と」
無言で睨んでくるコオリの視線が痛くて、ハチミツの目線は慌てたように宙を舞う。
「あ……」
コノハナは呟き、着物の袖で口許を覆った。
そう、自らの失言に気付き、申し訳なさそうにハチミツを見る。
トケイは二度目の訪問でこう言ったのだ。
『従者に内緒で、考えて欲しいことがある』と。
だから、ハチミツはコオリに二度目の来訪を言っていない。
厳しさを増すコオリの視線。
「……ごめん」
ハチミツは少し上目使いでコオリに謝った。
謝るということは、トケイは二度、ハチミツの元にやって来たということ。隠していた理由もあるということ。
コオリは目を閉じ、胸に迫るモヤモヤを閉じ込め、次に瞳が開いたときには、諦めの溜息をついた。
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