143人が本棚に入れています
本棚に追加
/241ページ
1994年 春
正人は大学に居残ることとなった。たった一科目落としたが為に。
就職内定は取り消された。
下宿も引き払い、電車通学に変えた。
二度目の就職活動では、アパレルメーカーに就職を決めた。
そこは一度目の就職活動でも内定をいただいていたのだが、銀行に内定をいただいた為、辞退した会社だった。
正人の再度の受験を快諾してくれ、ほぼ試験や面接なしで、
いきなり最終の重役面接に臨み、あっさりと合格が決まった。
銀行から製造業。
「まぁ仕方ないかぁ」
正人は自分に言い聞かせた。
しかし
『人生万事塞翁が馬』
まさにそんな留年生活となる。
なんと正人が最初に行く予定だった銀行は破綻したのだ。
さらに、
下宿を引き払っていたおかげで1995年初に起こった『阪神淡路大震災』をも免れる事となった。
復旧ボランティア活動をしに京都から駆けつけた際、自分が住んでいたアパートに行って驚愕した。
アパートの住民は全員死亡していた。
地盤が弱かったせいか、建物は無惨な姿となっていた。
もしそのまま住んでいたら…。正人はその場に立ち尽くした。
花束がないので、近くの自販でお茶を買って供えた。
街はまさ生き地獄だった。
最初のコメントを投稿しよう!