学生時代

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1994年 春 正人は大学に居残ることとなった。たった一科目落としたが為に。 就職内定は取り消された。 下宿も引き払い、電車通学に変えた。 二度目の就職活動では、アパレルメーカーに就職を決めた。 そこは一度目の就職活動でも内定をいただいていたのだが、銀行に内定をいただいた為、辞退した会社だった。 正人の再度の受験を快諾してくれ、ほぼ試験や面接なしで、 いきなり最終の重役面接に臨み、あっさりと合格が決まった。 銀行から製造業。 「まぁ仕方ないかぁ」 正人は自分に言い聞かせた。 しかし 『人生万事塞翁が馬』 まさにそんな留年生活となる。 なんと正人が最初に行く予定だった銀行は破綻したのだ。 さらに、 下宿を引き払っていたおかげで1995年初に起こった『阪神淡路大震災』をも免れる事となった。 復旧ボランティア活動をしに京都から駆けつけた際、自分が住んでいたアパートに行って驚愕した。 アパートの住民は全員死亡していた。 地盤が弱かったせいか、建物は無惨な姿となっていた。 もしそのまま住んでいたら…。正人はその場に立ち尽くした。 花束がないので、近くの自販でお茶を買って供えた。 街はまさ生き地獄だった。
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