無償の思いやり

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ニュースは伝えていた。 「現地では全てのライフラインがストップしています。水道、ガス、交通機関、一部地域では電気もストップしています。また道路も地割れなどが起きて大変危険な状態です…」 「これがあれば少しは助かるやろ。みんな大丈夫かなぁ」 正人は仲間の顔や、行きつけの店の人を思い浮かべていた。 京都から西宮までは国道171号「通称 イナイチ」一本で行くことができる。 しかし一時間も原チャリ乗ってると、かなりケツがシートに飽きてきよる。右に左にズラしてみるが、かなりにケツが痛い。「痔になったらどないしてくれんねん。 … は~ぃ。ここも信号ブッチねぇ。とりあえずケツ痛いもん。」 スタートして一時間半。まもなく西宮ってとこまで来た。 「よしもうちょっとや!武庫川渡ったら着いたも同然や!頑張れ俺。大丈夫か?ケツ」 正人は痛い尻のことで頭が一杯だった。 対抗車が全く来ないことにも気づかない程…。 その時だった。大きな看板とバリケードが見えた。 『通行止 171号線武庫川橋梁崩落のため通行禁止』 「何やと……。」 正人が初めて震災の被害にふれた瞬間だった。 尻の痛みは感じなくなっていた。
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